Graduation Research

トンネリングと視線計測を利用したVR酔いの緩和手法に関する研究


近年,高い没入感とインタラクティブ性から,様々な分野でVR(Virtual Reality)が活用されています.しかし,体験中に酔いや吐き気を催すVR酔いによって,体験が阻害される問題が指摘されています.VR酔いは,視覚や平衡感覚など感覚の整合性が弱い状態で引き起こされると考えられ,VR酔いを緩和する手法についても検討されてきました.トンネリングは,これらのVR酔いを緩和する手法のひとつで,VRHMD(Virtual Reality Head Mounted Display)内で,出力される映像の視野角に制約をかけ,知覚される情報を限定することで整合性の低下を抑えます.現在のトンネリングは,注視位置を考慮せずに視野を狭めているため,没入感を低下させてしまう問題が考えられます.本研究では,視線計測技術を用いて狭める範囲の中心を常に注視位置に固定することにより,VR酔いの緩和と没入感の向上の両立を目指します.

顕著性マップを用いたGUI配置の検討


運転におけるARメガネの使用は,GUIやコンテンツが運転者の視界を遮り事故を誘発する恐れがあるとされ,現在は禁止されています.しかし,視野の中でも注意に影響を与えない位置に情報を提示することができれば,運転者への注意喚起やナビゲーション等の運転に関連する情報を視線を大きく動かさずに確認できるようになるなど,利点も多く考えられます.本研究では,画像から注視する確率が高い領域を推定する計算モデル(顕著性マップ)をリアルタイムに計算することで,注視する可能性が低い位置を選んで情報を提示するシステムを開発します.さらに,この提案システムを運転時に使用した場合の知覚変化を分析し,運転能力の影響について検証を行います.本提案手法は,運転のみならず,xR1で使用されるGUIや情報の表示にも利用できると期待されます.

1. xR : VR=Virtual Reality, AR=Augumented Reality, MR=Mixed Realityを総称した呼称

マルチモーダルを用いたダンベルトレーニング状態再現デバイスの開発


フィットネスなどの身体トレーニングは,始めてから効果が目に見えてくるまでに長期間を要するため,続けることに困難を感じる人は少なくありません.同じ環境でトレーニングを続けることは,慣れによる飽きを誘発し,トレーニングをやめてしまう一因にもなり得ます.本研究では,VR(Virtual Reality)を利用したフィットネスの一実装として.触覚を再現する技術とVR空間における視覚とのマルチモーダルを用いてダンベルトレーニングをしている状態を再現し,飽きの軽減を試みます.VR空間内ではトレーニング場所を森の中など様々な環境へ自由に変更できます.さらに,ダンベルをさらに重いものや軽いものに変更することが可能なため新たな刺激が加わり,飽きないトレーニング環境を作ることができます.本システムは,VRフィットネスの分野のみならず,ゲーム等の分野においての活用が期待されます.

VRにおける視線の奥行き移動を利用した入力手法の提案


近年普及が進むVR(Virtual Reality)では,装着者の視線を推定可能なHMD(Head Mount Display)も開発されるようになっています.その活用方法の一つとして,ALS患者などの身体障害者のために,キーボード上の文字を2次元の視線座標を利用して入力する手法が提案されています.しかし,従来の手法では,項目の選択に瞬きや一定時間の注視が必要なため,操作時間が長くなる傾向にあります.長文の入力などに必要な多量の選択操作を伴う作業では,利用者に負担がかかりやすくなります.本研究では,VRHMD装着時の視線による選択操作に注視点の奥行き方向への移動を用いる手法を提案し,その効果を検証します.本提案手法は,視線による入力操作の効率化と高速化を実現し,利用者の負担を軽減することが期待されます.

画像による規格外卵の選別の自動化


ゆで卵を生産するための生卵は,養鶏所であらかじめ検査を受けた後に加工工場へ送られてきますが,輸送中の傷や僅かなシミが付いている卵が含まれます.これらの規格外卵は,人の目によって選別されていますが,検査する量が多く労力を要します.また,長時間の作業などによって判別基準がばらつく恐れもあります.本研究では,カメラで撮影した卵の画像を処理することで,規格外卵の特徴を検出する手法を提案します.本手法を利用して卵の選別を自動化することで,作業の負担やコストを軽減することを目指します.第一歩として,静止画の単一の卵を正確に検査する手法を確立し,その後複数の卵を同時に検査できるようにし,最終的には加工工場でゆで卵が生産されるスピードで処理可能な検査手法の開発を目指します.

OpenPoseを用いた手話認識


聴覚障がい者のコミュニケーション手段の一つである手話は,聾者の母語として使われています.しかし,習得に時間を要することもあり,健聴者で手話を使える人はごく少数に留まっています.現状では,聾者と健聴者の会話はジェスチャーや読話を用いることが多く,互いに思うように言葉を伝えられないことがあります.本研究ではストレスフリーな会話の実現を目指し,手話を健聴者の母語である言語へ翻訳するシステムのために,身体姿勢推定のライブラリであるOpenPoseを利用した手話認識手法を開発します.従来,手話認識はKinectを用いた手法が提案されていますが,Kinectは太陽光に弱く屋外での使用は難しいために使用場面に制限があります.これに対して,OpenPoseには対象が十分な大きさで撮影されていればよく,環境による大きな制約はありません.今年度は,可視光カメラで手話の動作を撮影して動きを時系列データとして記録・分析するシステムを開発します.

北限の海女の素潜り漁における熟達者および初心者の技の可視化


日本の沿岸で行われる海女の素潜り漁は近年無形文化財として登録され,熟練者の経験が評価されています.水深10mに及ぶ潜水と漁の技術を継承するため後継者の育成欠かせませんが,口伝えや目視,ビデオ映像による教育に頼っており,初心者は感覚的に技術を学ぶ必要があり,視覚的に理解しやすい様式での技術の可視化が求められています.動作の可視化には人物の3次元姿勢推定の手法が活用されており,従来はKinectなどを用いて陸上における人物の3次元姿勢推定を行っていますが,海中で用いるには広範囲での撮影が不可能であるという課題があります.一方、広角のステレオカメラを用いる方法であればその課題を解消することができます.本研究では,広角のステレオカメラと画像中の2次元姿勢を推定できるOpenPoseを組み合わせ,熟達者と初心者の素潜り漁における3次元姿勢を推定します.そこから両者の身体動作を可視化,比較することで, 熟達者との動作の違いを可視化しアマチュアの効率的学習に役立てます.